環境問題に具体的な対策を
「竹」は日本では古くから親しまれてきた大切な植物です。器や籠、お箸やざる、工芸品、筍、門松、七夕など多くの場面で私たちの生活の一部として役立ってくれていました。しかし、近年ではプラスチックの普及や高齢化により竹が使われない時代となってきてしまいました。その影響で手入れの行き届かなくなって荒れ果ててしまった竹林(これを放置竹林といいます)が急増してきております。世間ではやっかいもの扱いされ、竹害という言葉までできてしまいました。竹は本来「もの」として有効に利活用できるだけでなく、映画やドラマ、CMの撮影に使われるなど適切に管理すれば美しい景観としての竹林にもなり得るのです。また、竹は光合成をする植物なので二酸化炭素を吸収し、温暖化対策の一翼も担っています。最近では、SDGsの普及によって竹が見直され始め、色々な形で注目を集めています。例えば、竹から作る化粧品や衣類、食物繊維が豊富なことから食品に混ぜる竹炭パウダーとして、また竹に穴を空けてろうそくやLEDを灯す竹灯りなど。竹は毎年毎年新しい筍を出し、わずか3か月で大人にまで成長します。その成長速度は植物の中で世界最速とまで言われています。切っても切ってもまた来年には生えてくる。そして有効利用すれば元気な竹林になっていく。持続可能な資源に注目が集まる中、竹ほど適した植物は他にありません。竹にはまだまだ多くの可能性があります。その可能性について私どもも追究していきたいと思っています。
学校教育に「竹灯り」を
私はもともと高等学校の教員を8年間させて頂いておりました。その前は教職大学院という所でアドラー心理学に基づいた学級経営の勉強しながら小・中学校に2年間携わらせて頂いていました。子どもたちの自尊感情・自己肯定感、所属欲求、共同体感覚を高めるためにどうすればいいかを学生時代から教員現役時代までずっと模索し続けてきました。ある時教え子から「竹あかり」というものを教えてもらい、それを総合的な学習の時間、特別活動の一環として学校の文化祭で披露することになりました。それまで竹とは何の縁もなかった私でしたが、活動を共にしていく中で生徒たちがみるみる輝いていく姿を見ることに感銘を受けました。それ以来、少しずつですが様々な都道府県に呼んでいただき、学校の授業として竹灯りを提供させて頂けるようになってきました。児童・生徒からは「みんなと一緒に何かを作り、それを自分の大切な人に見てもらって笑顔になってもらうことが嬉しかった」や「できなかったことができるようになってよかった」、「環境問題をより意識するようになった」、「みんなとより仲良くなれた」など、多くの感想を頂きました。あえて一学校の教師という立場から、フリーランスの立場をとることで、全国の学校を回りより多くの子どもたち・先生方・保護者さま・地域の方々に笑顔になってもらいたいと思っています。
あなたの大切な人・大切なまちに笑顔を
竹には不思議な力があります。竹に触れると自然と笑顔が生まれたり癒されたりします。特に人と人をつなぐ力があると私は思っています。多くの植物が繁殖の相方として虫や鳥・動物たちを選ぶ中、竹は人間を相手として選びました。筍として植えることで竹林として育っていくからです。竹は一人では管理できません。人と人が協力して竹を切り、加工しそしてまた人の手に渡っていきます。昔から竹が好きという方もけっこうおられます。不思議と日本人に馴染むのでしょうね。特に、私は竹灯りというものに魅力を感じています。竹に穴をあけて灯りを入れて飾る。ただそれだけかもしれませんが、沢山の人が笑顔になっていきます。熊本にCHIKAKENさんという会社があります。今から約20年前から全国・世界で竹あかりを灯し続けておられる方々です。「竹あかりを新たな日本の文化に」「自分たちのまちは自分たちでともす」をコンセプトに今もなお第一線で活躍しています。地域の人たちと一緒に竹あかりを作り一緒に灯す。そしてその地域に訪れた人たちがみんな笑顔になっていく。そして竹あかりを通して色んな人が繋がっていきます。人と人、人とまち、自然環境と人が円のように広がっていきます。A!やSNSの普及により便利な世の中になった一方で、自然と関わる機会や人と繋がる機会が減っているような気がしています。新たな科学技術の発展は必要だと思う一方で、我々人間が元来繁栄して来られた「仲間をつくる」ということもこれから一層重要になってくると思います。日本は災害が多い国です。そして自殺率も少なくないです。何かあった時に互いに助け合える、困ったときに相談できる相手がいる、そんな関係づくりのお手伝いをさせて頂きたいと私は思っています。そして日本の伝統としての竹を使い美しい空間、作品をつくることで、多くの方々に感動を届けたいと思います。